CANTUS ANIMAEはどこへ行く2025

※この文章は、2025年の活動開始にあたって団内に発信された内容を基に作成しています。


 今後CAをどのような合唱団にしたいかという私の思いをまず述べます。

『年輩者が一生歌い続けることができる場でありながら、他の合唱団ではなかなか取り上げることが難しい内容の演奏会をやり続けることで個性的な魅力を保ち続け、かつその音楽活動の一端をコンクールの全国大会などでも披露し続ける力も持ち続け、常に合唱界に何かを発信し続ける団体でありたい。そして、私が去ったあともその個性的な活動を次の世代が継続できる団体でありたい』

 CAは今、約半数の方が、50代以上です。前述の『年輩者が一生歌い続けることができる場でありながら、他の合唱団ではなかなか取り上げることが難しい内容の演奏会をやり続けることで個性的な魅力を保ち続け、かつその音楽活動の一端をコンクールの全国大会などでも披露し続ける力も持ち続け、常に合唱界に何かを発信し続ける団体』で有り続けるためには、声の面で若い世代の力を借りることは必須ですし、年輩者を支えてくれるような若手を育成していくことが極めて重要です。しかし、それは大変に難しいことです。合唱団が成功体験を積み重ねていった時、その中心にいた団員には自信がみなぎり、一方で、そういう成功体験を一緒にしていない若手たちは、年輩者の陰にかくれてついて歌うだけで、音楽を楽しむことを忘れている。そんな合唱団を、私はいくつもみてきました。合唱団のメンバーが、同じ方向を向けないでいることが大きな原因だと考えます。

 今のCAにも、そのような兆候はないでしょうか。コンクール初参加で全国大会へ駒を進め、そして国際コンクールでも評価をいただいたことを経験しているメンバーと、合唱団として出来上がったところに入ってこられた方の、CAに対するモチベーションや向き合い方が違うのは当然のことなのですが、その思いの違いが今後合唱団を分裂へ向かわせる引き金になるかもしれないことは、想像に難くありません。

 私は、コンクールでの評価(金銀銅賞)など、最早どうでも良いと思っていますが、全国大会で18回金賞を取り続け、2021年には、10年連続金賞の表彰を受け、しかし2022年には全国への出場を逃し、2024年は初めての銀賞でした。その間に入団してくださった若手と、今まで数々の成功体験(コンクールの評価だけでなく音楽的な成功体験)をしてきたベテランメンバーでは、今の状況や今年の結果の受け止め方が全く違うと思います。だからといって、その経験の差を通常の活動の中で埋めるのはなかなか難しいと思います(やはり若者はどうしてもベテランに遠慮します。昨今全国へ駒を進めてきている団体は、ほぼ同年代が集まった合唱団が増えましたね。幅広い年代層の合唱団が皆で同じ方向を向いて技術的音楽的一体感を持った演奏をすることが如何に難しいかの証でもあったと思います)。

 閑話休題。経験は理屈ではありません。「自分たちで達成した」という実感が必要なのです。だとすると、20年後にCAを支えてくれているであろう若手たちにも、自分たちの力だけで、音楽的成功体験が出来る場を、CAが用意するしかないと思うのです。そんなことに目を向けた合唱団は聞いたことがありませんが、それをしないと他の一般合唱団と同じ運命を辿るのは間違いないと思うのです。彼・彼女らが、20年後に今の50代以上のように自信を持って歌い、また技術的に衰えてきた高齢者を大きな包容力で支えて合唱団全体としての技術レベルを保ち、皆が同じモチベーションで歌うためには、今、ベテラン世代が若者に投資するような活動を、「CA内活動として行うこと」が必要だとの結論に至りました。 ということで、若者育成プロジェクトとして、2025年1月1日現在、40歳以下のメンバーで、団内合唱団を編成し、都大会に挑戦していただくことにいたしました。「コンクールを磨く場として活用する」ということです。取り上げる曲は、故皆川達夫先生が「合唱音楽の楷書」と言われたルネサンスポリフォニーです。

 さて、次に各方面からご指摘いただいている声がバラけている問題です。これは、合唱団メンバーの構成が幅広い年代に亘っている今、ある意味仕方がないことです。全国大会でも、同世代だけで集まっている合唱団のハーモニーの輝きは傑出していましたね。しかし、金管楽器と弦楽器が溶け合うように、幅広い年代だからこその、幅広い年代の声が溶け合ったからこその、深くあたたかく輝かしい響きは絶対に実現できると思っています。そのための第一歩は、女声パートだけ、男声パートだけで、しっかりと声が溶け合う練習をする、そういう場を作るということが必要です。それを実現するために、CAを女声合唱と男声合唱に分けて本番へ向き合うことをしたいと思います。具体的には、女声合唱、男声合唱で都大会の同声合唱部門に参加したいと思います。「また、コンクール⁉」と思われるかもしれませんが、先にも書きましたように、「合唱団を磨く場としてコンクールを活用する」ということです。ただし、せっかく女声、男声に分けて練習するならば、それぞれに、先の技術的意図の他に、ステージに対するコンセプトはちゃんと持って音楽に向き合いたいと思っています。また、男声・女声で分けての活動は、将来、演奏会での演目に繋げていければとも考えています。

音楽監督 雨森文也

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