CANTUS ANIMAEはどこへ行く2025

 1998年に創団されたCANTUS ANIMAEは、当初は全日本合唱連盟主催のコーラスワークショップでの私の講座を受講くださった数名の方が、友人などに声をかけて23名で立ち上げてくださった合唱団です。ですから、当時はほぼ30代前後の方による、いわゆる同世代の集まりによる合唱団でした。しかしその後、合唱団の方向性に疑問を持った方が多数辞めていかれ、40数名おられたメンバーが10数名・半減以下になるという試練も味わいました。(立ち上げ当初のCAはルネサンス・バロック期の作品だけを演奏しておりましたが、「日本人は日本人の作品を積極的に演奏し、外へ発信していくことこそが大切」との私の信念に賛同いただけない方が辞めていかれました)
 そのような試練の中、私の信念に寄り添い、その後の活動を支えてくださった方々のおかげで、CAの活動に新たに賛同くださる仲間が少しずつ増え、コロナ禍で一時的に30数名まで減ったものの、今は約60名の仲間(10代から70代まで)が一緒に音楽をしてくださっています。

 「CANTUS ANIMAEはどこへいく」は少しずつ手直しをしてきました。
それは、「今、ここに集ってくださっている方にとっての合唱する・音楽する幸せとは何か」を常に考えてきたからです。おひとりおひとりは全く違う合唱人生・音楽人生を歩んで来られました。今、集ってくださっている方も、CANTUS ANIMAEだけで合唱人生を送っている方はほぼなく、今もいろんな場所で歌っている方がほとんどです。そういう方が、CANTUS ANIMAEに集っていることの意味をしっかりと実感され、かつそれぞれの方の音楽人生を豊かにするお手伝いをすることこそがCANTUS ANIMAEの存在意義であり、音楽監督として私が果たさなければならない責任だと考えています。

 ということで以下に最新版を認めました。


CANTUS ANIMAEはどこへ行く2025

今後CAをどのような合唱団にしたいかという私の思いをまず述べます。

『幅広い世代が融合し、多世代だからこそ生みだせる音を追求する。年輩者も若者も歌い続けることができる場でありながら、他の合唱団ではなかなか取り上げることが難しい内容の演奏会をやり続けることで個性的な魅力を保ち続け、かつその音楽活動の一端をコンクールの全国大会などでも披露し続ける力も持ち続け、常に合唱界に何かを発信し続ける団体でありたい。そして、私が去ったあともその個性的な活動を次の世代が継続できる団体でありたい。』

 CAは今、約半数の方が40代以上です(2025年1月時点の年齢構成は、10代・20代:11人、30代:9人、40代:14人、50代以上:24人)。経験に裏付けされた深い音楽性をもって歌に臨んでいますが、声の面で若い世代の力を借りることは必須です。一方で、若者には経験がありません。年配者と若者の経験の差は大きな差であり、それが分断を産んでしまう要因となります。合唱団が成功体験を積み重ねていった時、その中心にいた団員には自信がみなぎり、一方で、そういう成功体験を一緒にしていない若手たちは、年輩者の陰にかくれてついて歌うだけで、音楽を楽しむことを忘れている。そんな合唱団を、私はいくつもみてきました。合唱団のメンバーが、同じ方向を向けなくなってしまうのです。

 今のCAにも、そのような兆候はないでしょうか。コンクール初参加で全国大会へ駒を進め、そして国際コンクールでも評価をいただいたことを経験しているメンバーと、合唱団として出来上がったところに入ってこられた方の、CAに対するモチベーションや向き合い方が違うのは当然のことなのですが、その思いの違いが今後合唱団を分裂へ向かわせる引き金になるかもしれないことは、想像に難くありません。 私は、コンクールでの評価(金・銀・銅賞)に拘る必要はないと思っています。この思いは38年前に初めて一般の合唱団の指揮者として全国大会の舞台に立った時から変わっていません。一方で、CAは全国大会で18回金賞を取り続け、2021年には10年連続金賞の表彰を受けました。しかし2022年には全国への出場を逃し、2024年には初めての銀賞を受賞しました。この間に入団してくださった若手と、今まで数々の成功体験(コンクールの評価だけでなく音楽的な成功体験)をしてきたベテランメンバーでは、今の状況や今回の結果の受け止め方は全く違うと思います。だからといって、その経験の差を通常の活動の中で埋めるのはなかなか難しいと思います(やはり若者はどうしてもベテランに遠慮します。昨今全国へ駒を進めてきている団体は、ほぼ同年代が集まった合唱団が増えましたね。幅広い年代層の合唱団が皆で同じ方向を向いて技術的音楽的一体感を持った演奏をすることが如何に難しいかの証でもあったと思います)。

 閑話休題。

 経験は理屈ではありません。「自分たちで達成した」という実感が必要なのです。だとすると、20年後にCAを支えてくれているであろう若手たちにも、自分たちの力だけで、音楽的成功体験が出来る場を、CAが用意するしかないと思うのです。そんなことに目を向けた合唱団は聞いたことがありませんが、それをしないと他の衰退していった一般合唱団と同じ運命を辿るのは間違いないと思うのです。彼・彼女らが、20年後に今の50代以上のように自信を持って歌い、また技術的に衰えてきた高齢者を大きな包容力で支えて合唱団全体としての技術レベルを保ち、皆が同じモチベーションで歌うためには、今、ベテラン世代が若者に投資するような活動を、「CA内活動として行うこと」が必要だとの結論に至りました。 ということで、若者育成プロジェクトとして、2025年1月1日現在、40歳以下のメンバーで団内合唱団を編成し、都大会に挑戦していただくことにいたしました。「コンクールを磨く場として活用する」ということです。取り上げる曲は、故皆川達夫先生が「合唱音楽の楷書」と言われたルネサンスポリフォニーです。
 一方で、ではベテラン組はどうするのか。若者の成長を見守るだけでよいのか。そうではないはずです。ベテランの持ち味は、経験からもたらされる深い音楽性です。これをさらに磨き向上させるための活動も、新たに展開します。41歳以上の団員で団内合唱団を立ち上げ、二つの柱[あまり演奏されなくなった昭和・平成の名曲の演奏][オーケストラ付き合唱曲の室内楽編成版での演奏やそうした室内楽版を新たに委嘱して発信する活動]を展開し、将来的にはベテランメンバーだけでの演奏会を実施します。

 さて、最後に、各方面からご指摘いただいた、声がバラけている問題への取り組みです。この問題は、合唱団メンバーの構成が幅広い世代に亘っている今、ある意味仕方がないことです。全国大会でも、同世代だけで集まっている合唱団のハーモニーの輝きは傑出していましたね。しかし、金管楽器と弦楽器が溶け合うように、幅広い世代の声が溶け合ったからこその、深くあたたかく輝かしい響きは絶対に実現できると思っています。そのための第一歩は、女声パートだけ、男声パートだけで、しっかりと声が溶け合う練習をする、そういう場を作るということが必要です。それを実現するために、CAを女声合唱と男声合唱に分けて本番へ向き合うことをしたいと思います。具体的には、女声合唱、男声合唱で都大会の同声合唱部門に参加したいと思います。「また、コンクール⁉」と思われるかもしれませんが、先にも書きましたように、「合唱団を磨く場としてコンクールを活用する」ということです。ただし、せっかく女声、男声に分けて練習するならば、それぞれに、先の技術的意図の他に、ステージに対するコンセプトはちゃんと持って音楽に向き合いたいと思っています。また、男声・女声で分けての活動は、将来、演奏会での演目に繋げていければとも考えています。

 2025年のCANTUS ANIMAEは、以上を活動方針として実践していきます。これまでにはない合唱団を目指した挑戦です。興味を持った方は、ぜひ一緒に挑戦しましょう。

音楽監督 雨森文也

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