【20TH つながる魂のうた】他団での初演エピソード 歌い継ぐということ

ついにGWに突入してしまいました!
みなさん、最終日の予定はもちろん決まっていますね?笑
さて、今回の企画記事も終盤を迎えてきました!

第4弾はCAの隠れ気象予報士テノールのふっきーが、前半は初演エピソード、後半は20TH演奏会について、お送りいたします♪


もう15年以上前のことになりますが、いわきの方々から岡﨑光治先生への委嘱作品、カンタータ『魂の坑道は 果てしなく』の仙台初演に携わりました。

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作曲家ご本人による熱い指導

岡﨑先生には、指揮法講習会などでお世話になった間柄で、お声がけ頂き、ご本人の指揮での演奏ということから、何も知らないまま、二つ返事で参加を決めました。

夏暑く、ご年配の方も多い中、魔封波さながらの先生の指揮と、子どもが泣き出すような鋭い眼光で、先生自身による熱い練習を何度もしていただきました。

こんな熱い練習は、これ以降、経験したことがないかもしれません。

この曲は、とにかくテーマが重い。

いわきの炭鉱で発生した「じん肺」の犠牲になった方々への鎮魂歌なのですが、『原爆小景』『悪魔の飽食』といった戦争の風景とはまた違う、戦後の日本における厳しい労働環境、社会情勢や環境問題といった、今も私たちの日常に潜む戦いの風景。

そこで犠牲になり、散っていった人々。今もなお苦しむ人々。

恥ずかしながら、私はこの曲と出会うまで「じん肺」のことを知りませんでした。
同じ時代に、かたやプロジェクトXのように美談として語り継がれる人達もいれば、時代に翻弄され、苦しめられ、忘れられつつある人達もいたのです。

今やインターネットで簡単に情報にアクセスできる時代です。現に「じん肺」で検索すると、34万件もヒットしました。しかし、こんなにたくさんの情報が隣にあるにも関わらず、自らアクセスしない限り、一生知ることがないかもしれません。

ほんの3文字を入力して、リターンキーを押すだけなのに。

演奏会の後に

演奏の後、レセプションの場で、先生から楽譜にサインを頂きました。

歌ってくれてありがとう

と。

このようなテーマについて、当事者でもない人が自ら声を上げていくことは難しいかもしれません。また、被害者の事を考えると、軽々しく話すようなモノでもないかもしれません。

しかし、話せないからこそ、音楽の力を借りて歌い継いでいく。歌い継ぐ機会に自ら参加していくことで、自らの心を動かし、忘れず、次の世代に伝えていく手助けができるのでは、と思います。

見も知らぬ土地であるいわきに対して、今でも心に残っている想いがあります。

いわきは東日本大震災で大きな被害を受けました。また、私の家族も被災しました。

学生時代を過ごした仙台も被災しましたが、その場にいなかった私は語る言葉を持ちません。当事者ではない気持ちから、どこか支援にも積極的になれない自分がいます。

何十年も経った後、皆さんの記憶が薄れた頃に、この震災を扱う新たな合唱曲が生まれるかもしれません。この時代に生きた者として、将来、そういった機会に微力でも参加できれば、と思います。

■20TH演奏会で取り上げる「その日 -August 6- 」

演奏会で歌う三善晃先生の「その日 -August 6- 」は、広島で活動する「合唱団ある」により委嘱された曲です。

1945年8月6日、広島にいなかった、という詩人・谷川俊太郎、そして三善先生自身の原罪感が曲の根底にあります。

戦争世代ではない私たちがこの曲と向き合うのは簡単ではありません。しかし、自分自身の経験を振り返り、無知と向き合い、詩と曲から少しでも多くの風景を感じ取り、歌い継ぐという責務を果たしたいと思います。

20TH演奏会について

皆さん、好きな(音楽)アーティストはいますか?
具体的な名前が浮かんだ方も多いかと思います。
そんなアーティストの新作を今か今かと待ち望んだ経験も、
きっとお持ちだと思います。

発売日をチェックしたり、雑誌に載った情報をチェックしたり…
CMで少しでもフレーズが流れたりすると、もう居ても立ってもいられない。
発売されるや否や、CDを購入したり、ダウンロードをしたり、
夜を通して、ベッドの上で繰り返し繰り返し聴きました。
そんな頃が私にもありました。

では皆さん、好きなアーティストに曲を作ってもらったことはありますか?
今やSNSが普及し、アーティストとの距離はグッと近づいたとはいえ、
そんな経験は、ほとんどないのではないでしょうか。

一生に一度あるかないかという機会。
しかし、なんと今回は、

3名の新進気鋭の作曲家の方々に委嘱をお願いして、
あまつさえ、ご本人をお招きし、お話しを伺い、しかも一緒に演奏させていただく、

という普通の人生十回分!?にも相当する濃密な体験をしています。

♪森田花央里先生との練習♪

♪森田花央里先生との練習♪

さて、新作をループしていた皆さん。
アウトロの後、始まってもいないイントロが聞こえてきた経験があるかもしれません。
当然、ループして聴く程、良い「音」だったのだと思います。
ポップスでは、演奏を録音し、ミックス、マスタリングし、完成します。
様々なプロの耳で何度もチェックされて、時代に合われた厳選された音が創られます。

そう。作品が羽ばたくには、やはり「音」にしなければいけません。

これらの作品を最初に「音」にするのは私たちです。
私たちに多くを託して下さった先生方からの信頼と、責任の重さに震えます。
私たちも良い「音」をループしたいですが、手元には楽譜しかありません。
でも、それは、まだ誰も聴いたことのない、
どんな音にもなりうる無限の可能性を秘めた宝の地図です。

先日、安藤先生、森田先生、松本先生の渾身の楽譜が出揃いました。
どれも個性が光る素晴らしい曲ばかりで、初演に携わることができる幸運に感謝しています。
そして、素晴らしい詩との出会いも与えてくださいました。
作曲家と詩人の2つの世界の共鳴が、時代を超えた奥行きを生み出し、ただただ感心させられます。

先生方との練習では、作品に懸ける強い想いを直接聴かせていただきました。
雨森先生からは「君たちは『生き証人』になるんだよ」と。
この貴重な時間を五感全てで記憶するように、
必死に「音」を確かにしていくプロセスに取り組んでいます。

先生方から迸る情熱に圧倒されつつも、
ひたすら練習を重ね、今の私たちの全てをぶつけた熱演で報いたいと思います。

演奏会を楽しみにして下さっている皆さん。
音楽は、演奏者と聴衆の間に生まれるものだと思います。
皆さんもぜひとも、これら生まれ立ての作品を一緒に体験し、
最初の聴衆として『生き証人』となってください。

それでは、皆さん。
お会い出来る日を楽しみしています。

☆ ☆ ☆

CANTUS ANIMAE The 20th Concert
つながる魂のうた
―3人の若手女性作曲家による新作の響演―

日時:2016/5/8(日)
開演:13:30 (開場:13:00)
会場:第一生命ホール 全席自由
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入場料:一般2,500円 高校生以下1,000円

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