こんにちは。管理人です!
秋も深まり冬への移り変わりが見えてきた11月、全日本合唱コンクール全国大会まであとわずか!
ということで、今回は私たちCANTUS ANIMAEが演奏する曲目を紹介していきたいと思います。
課題曲
G4 Ⅰ ―空と涙について―(「恋の色彩」から)/古今和歌集より/田畠 佑一 曲(2022年度合唱組曲作品公募入選作品《第33回朝日作曲賞》)
自由曲
「Sämann ー種を蒔く人ー」混声合唱とピアノのために
作曲:信長 貴富
指揮:雨森 文也
ピアノ:平林知子(自由曲)/野間春美(課題曲)
毎年たくさんの団体が挑戦されるG4ですが、今年は特に選曲された団体が高校・一般共に多かったのではないでしょうか。
失恋をテーマにしたピアノの揺れ動きが美しくも激しい名曲に、CA団員も練習当初からハマっていったように思います。
この曲が収録されている組曲「恋の色彩」には、「混声合唱とピアノのための」という副題がついています。でも、筆者は「ピアノと混声合唱のための」という解釈もあり得るのではないかと思うほど、ピアノは表情豊かです。野間先生の繊細ながら激情を秘めたピアノが素晴らしく、一聴の価値があります。
もちろん、歌はそれに飲まれず、ピアノを潰さず……(イタリア古典歌曲のような音色で始まると、筆者は感じています)。「ピアノへ、そして曲へ寄り添う」を徹底し、全員が歌曲を独唱するような心持ちで作り上げてまいりました。
1000年前も現代も、失恋の傷は変わらず消えず。
繰り返される人の営みに想いを馳せながら、現代に流れ着いた古の人々の心の痛みを歌い上げたいと思います。
自由曲は、男声版としてお江戸コラリアーずさんが2011年に初演され、今年5月に混声版を私たちが初演した曲です。
Sämannは、ゼーマンとお読みください。
↓合唱ブロガーこと文吾さんの、お江コラさんが全国大会に進まれた際に寄稿された当時の解説を含むページになります。
ぜひこちらもご参照ください。
https://bungo618.hatenablog.com/entry/20111118/1321594138
男声版初演は、東日本大震災から5か月後に行われました。初演の際のプログラムノートに、信長先生は次のように書かれています。
「あの日から私は、ごちゃ混ぜになった感情を名付けられないまま生活していました。地震や津波によって命を落とされた方々、大切な人を亡くされた方々、住むところを奪われた方々、現在も不自由な生活を余儀なくされている方々の悲しみや怒りは私の想像を超えるものであり、私の感情などは、安全な場所にいる人間の利己の範疇に漂っているものにすぎないものなのだと思います。(中略)一方、何かを表現したいという執念のような欲求も私の中にありました。その名付けられないままの感情でもいいからそれを正直に音楽にして吐き出したいという気持ちに至りました。」
歌詞は、ブラームスのドイツレクイエム第1楽章と同じ旧約聖書の詩篇126。その歌詞が、時には音声記号によって、モザイクのように配置され、言葉にならない言葉の音像が絶望を表すかのように絶えず流動していきます。
また、種を蒔く人という副題も、作品の大きなポイントです。
信長先生は、前述のプログラムノートに次のようにもお書きになっています。
「古代エジプト人にとって種を蒔くことは、オリシス(生産の神)の遺体(=種)を葬る(=蒔く)ことと考えられ、種蒔きの時は悲しみの時とされてきました。これが「涙」の根拠となっており、曲の中でもTränen(涙)の語が重要なモチーフとなっています。」
種を蒔くという行為は、個人でも社会でも、人類史において常に涙を背負っているもの、もしくは涙の予感を回避するために行われているのではないか、必ずしも聖書の世界の話だけではないのではないか、筆者はそう感じています。
そして、そう考えると、信長先生の思い描いた描写はとてもリアリティのあるものだと思えてくるのです。
一方で、人々の蒔いた種が、より強大な力によって踏みにじられることも、人類史共通の苦しみでしょう。
本作のピアノは、歌には寄り添わず、さながら強大な敵対者のように人々の敗北を予感させる存在です。
まるで、オーケストラが、あまたの人や子どもらの歌をかき消す三善先生の「レクイエム」や「響紋」のように……。
ピアノの力によって何度も遮られ踏みにじられる人々の声。それでも、種を蒔くことを、希望を求めることをやめないと高らかに宣言する人々の叫びに、ピアノは、神は……。
難解かつ強烈な現代作品ではありますが、たった1ページ、その心の奥に秘められた、それでもまだ希望を信じたいという祈りのコラールが挟まれています。
このコラールにどんな祈りを込めて歌い、絶望に立ち向かっていくのか。私たちにとって今回の演奏で最も難しく、最も大事な場面となります。
「絶望を胎生の糧としない愛を私は信じない」という三善晃先生のお言葉を胸に刻む私たちにとっても、避けては通れない大事な作品となりました。
Tränen(涙)とともに大切なキーワードとなっているのが、「froh(喜び)」です。
この言葉が、どのような音色と和音で現れ、そして大鉈のごとく歌を破壊しようとするピアノとどう対峙するのか、肌で感じていただけましたら幸いです。
また、カワイ出版様から混声版ゼーマンの楽譜の出版が決定いたしました!
難解な曲ではございますが、楽譜の前書きから譜面の隅々までにいたる信長先生の想いをお読みいただけましたら、ゼーマンや他の信長作品を演奏する際にも通ずる要素がきっと感じ取れるのではないでしょうか。
さて、長く書いてしまいましたが、りゅーとぴあ(新潟市民芸術文化会館)にて、CANTUS ANIMAEは11月26日(日)混声合唱の部の4番目、14:31〜頃の出演予定になっています。
素敵な美味しいご飯とお酒や歌に会えますようギリギリまで練習に臨みますので、日本全国の合唱を愛する皆様とお会いできるのを楽しみにしています!
運営をしていただきます新潟県合唱連盟の皆様、全国大会に出場される皆様、聞きに来られる皆様、どうぞよろしくお願いいたします。